相撲観戦で力士が激しく手を突き出す「突っ張り」を見て、「あれは押しとどう違うの?」「張り手とは何が違うの?」と疑問に思ったことはありませんか?突っ張りは相撲の基本技でありながら、他の技との違いが分かりにくいですよね。この記事では、突っ張りの定義から押しや張り手との明確な違い、歴代名手の紹介、さらには初心者でもできる練習方法まで徹底解説します。突っ張りを理解すれば、相撲観戦が何倍も楽しくなること間違いなしです。
突っ張りとは「手のひらで相手を連続して突く攻撃技」

突っ張りとは、相撲において手のひら(平手)で相手の胸や肩を連続して突く攻撃技です。
立ち合いや攻防の際に、左右の手を交互に素早く繰り出し、相手の体勢を崩したり土俵際まで押し込んだりする効果があります。
突っ張りはスピードと連続性が命で、一撃の威力よりも連打によるリズムと圧力で相手を圧倒します。
相撲の基本動作の一つであり、初心者から横綱まであらゆるレベルの力士が使用する重要な技術です。
突っ張りの正式な定義と語源
突っ張りは「平手で相手の胸などを下からやや上向きに突き飛ばすように突く技」です。両手を交互に使い繰り出す連続打撃で、そのまま相手を土俵の外に出せば「突き出し」、土俵内で倒せば「突き倒し」の決まり手となります。
「突っ張る」という言葉は、「突く」と「張る」が組み合わさった動作を表しており、手のひら全体を使って相手に圧力をかけ続ける様子を表現しています。
語源的には、物を強く押したり支えたりする際に使われる「つっぱる」という日常語が相撲用語として定着したものです。
突っ張りは決まり手の一つである「突き出し」や「突き倒し」の基礎動作となっており、相撲の攻撃技術の根幹を成しています。
突っ張りは反則?禁じ手との境界線
結論から言うと、突っ張りは完全に合法な技であり、反則ではありません。
ただし、突く場所や突き方には明確なルールがあり、以下の行為は禁じ手として反則になります。
- 拳(こぶし)で殴る:手のひらではなく握りこぶしで突くのは「握り拳」として禁止
- 喉をつかむ:ノドをつかむことは禁止(ただし、のど輪はこの限りでない)
- 目・みぞおちなどの急所を突く:目やみぞおちなどの急所を故意に突くことは禁止(なお、顔面への平手打ち「張り手」は合法な技)
- 髷(まげ)を掴む:頭髪(まげ)を故意につかむと反則
合法な突っ張りの条件は、手のひら(平手)を使い、胸・肩・顔の側面など許可された部位を突くことです。
行司や審判は、突っ張りが危険行為や禁じ手に該当しないか常に監視しており、違反があれば即座に取組を止めます。
力士は稽古の段階から、合法な突っ張りの技術と禁じ手との境界線を徹底的に叩き込まれています。
突っ張りと押しの違い|3つのポイントで比較

突っ張りと押しは、どちらも相手を前方へ攻める技術ですが、動作の性質と使用目的が明確に異なります。
以下の3つのポイントで両者の違いを詳しく見ていきましょう。
【違い①】接触部位と動作
突っ張りは、手のひら(平手)を使い、素早く引いて再び突く動作を繰り返します。
接触は瞬間的で、突く→離れる→突く、というリズミカルな連続動作が特徴です。
一方、押しは、手のひらや前腕全体を使って相手の体に密着させ、持続的に圧力をかけ続けます。
押しでは手を引かずに前方へ力を加え続けるため、相手との接触が途切れることがありません。
接触部位も、突っ張りは主に手のひらの中心部分であるのに対し、押しは手のひらから前腕まで広い範囲を使用します。
【違い②】連続打撃か持続圧力か
突っ張りは「打撃系」の技術であり、短時間に何度も突くことで相手にダメージと心理的プレッシャーを与えます。
熟練した力士は1秒間に3〜4回の突っ張りを繰り出すことができ、その連打のスピードが武器になります。
対して押しは「圧力系」の技術で、途切れることなく力を加え続けることで相手を後退させます。
押しでは瞬間的な衝撃よりも、持続的な力の総量が勝負を決めます。
例えるなら、突っ張りはボクシングのジャブ連打、押しはラグビーのスクラムのような力の加え方です。
【違い③】狙う効果と使い分けの場面
突っ張りの主な目的は、相手の体勢を崩すこととまわしを取らせないことです。
立ち合い直後や、相手が接近してきたときに突っ張りで距離を作り、有利な体勢を維持します。
また、連続した突っ張りは相手の視界を遮り、判断力を鈍らせる心理的効果もあります。
押しの目的は、相手を土俵外へ直接押し出すことや後退させて有利な位置を取ることです。
まわしを取った後や、相手が既に体勢を崩している状況で押しが効果的に機能します。
使い分けの基本:立ち合い・序盤は突っ張りで主導権を握り、相手が崩れたら押しに切り替えて一気に決める、という流れが理想的です。
突っ張りと張り手の違い|混同しやすい技を整理

突っ張りと張り手は、どちらも手のひらを使う技術ですが、動きの方向と目的が全く異なります。
初心者が最も混同しやすい技の組み合わせですので、明確に区別しましょう。
軌道の違い|前方に突くvs横から叩く
突っ張りは、前方に向かって直線的に突く動作です。
力士は自分の正面にいる相手の胸や肩めがけて、腕を伸ばす方向に力を加えます。
軌道は「前→後ろ(引く)→前」という直線往復運動であり、体の中心線に沿った動きです。
一方、張り手は、横方向から相手の顔面(主に頬)を叩く動作です。
腕を横に振る動作で、手のひらの側面または全体を使って相手の頭部を横から打ちます。
軌道は「外側→内側(横方向)」という円弧または横一線の動きで、ビンタのような動作です。
張り手の目的は相手の視界を奪ったり平衡感覚を狂わせたりすることで、直接押し出すための技ではありません。
突っ張りが「押す力」であるのに対し、張り手は「叩く衝撃」と言えます。
観戦時の見分け方
実際の取組を観戦する際、以下のポイントに注目すると突っ張りと張り手を簡単に見分けられます。
- 音:突っ張りは「ドン、ドン、ドン」という低く鈍い連続音、張り手は「パン!」という高く鋭い一発の音
- 力士の腕の動き:突っ張りは前後に直線往復、張り手は横に大きく振る
- 相手の反応:突っ張りを受けると後ろに押される、張り手を受けると顔が横を向く
- 使用頻度:突っ張りは連続使用が基本、張り手は立ち合いなど一発勝負で使われる
張り手は派手で印象に残りやすいですが、実際の取組では突っ張りの方が圧倒的に使用頻度が高い技術です。
スロー映像で確認すると、力士の手のひらが前を向いているか(突っ張り)、横を向いているか(張り手)がよく分かります。
突っ張りはなぜ有効?戦術的なメリットを解説

突っ張りが相撲で頻繁に使われるのは、以下のような戦術的メリットがあるためです。
①距離とペースのコントロール
突っ張りは相手との距離を保ちながら攻撃できるため、まわしを取られるリスクを最小限に抑えられます。
特に四つ相撲(組み合う相撲)が得意な相手に対して、突っ張りで近づかせない戦術は非常に有効です。
また、自分のリズムで攻撃を仕掛けられるため、試合の主導権を握りやすくなります。
②体格差を補える
体重や身長で劣る力士でも、突っ張りのスピードと技術で大型力士を圧倒できる可能性があります。
実際、身長170cm台の力士が180cm超の相手を突っ張りで破る例は珍しくありません。
組み合うと体格差が如実に出ますが、突っ張りならスピードと技術で対等以上に戦えます。
③心理的プレッシャー
顔面近くを連続して突かれると、相手は本能的に目を閉じたり顔を背けたりしてしまいます。
これにより相手の集中力と判断力が低下し、技をかけるチャンスが生まれます。
また、激しい突っ張りは観客を沸かせるため、場内の雰囲気を味方につける効果もあります。
④エネルギー効率が良い
組み合って力比べをするよりも、突っ張りで攻める方が体力の消耗を抑えられます。
特に長期戦になりそうな相手や、本場所で連日取組がある状況では、突っ張り中心の相撲が体力温存につながります。
相撲の突っ張り名手5選|歴代から現役まで

突っ張りを武器に活躍した力士は数多くいますが、ここでは特に印象的な名手を5名紹介します。
歴代の突っ張り名人|寺尾・北勝海・水戸泉
寺尾常史(てらお つねふみ)
寺尾は「突っ張りの名手」として知られ、身長185cmながら激しい突っ張りで大型力士を圧倒しました。
特に立ち合いからの連続突っ張りは速度と精度が抜群で、相手に何もさせずに押し出す取組が多数ありました。
三賞は殊勲賞3回・敢闘賞3回・技能賞1回を受賞しており、突っ張りを駆使した攻撃的な相撲と技術が高く評価されました。
北勝海信芳(ほくとうみ のぶよし)
第61代横綱・北勝海は、突っ張りと押しを組み合わせた「突き押し相撲」の完成形を見せた力士です。
優勝8回を誇り、その多くで立ち合いからの鋭い突っ張りが起点となっていました。
体格に恵まれながらもスピードを重視した相撲スタイルは、後の突き押し型力士の手本となりました。
水戸泉政人(みといずみ まさと)
水戸泉は豪快な突っ張りで人気を博しました。
一発一発が非常に重く、まるで鉄槌のような突っ張りで相手を後退させる様子は圧巻でした。
立ち合いでの塩まきパフォーマンスと共に、その激しい突っ張りは多くのファンを魅了しました。
現役で注目の力士
朝乃山広暉(あさのやま ひろき)
2026年現在、朝乃山は押しと右四つからの寄りを主体とした力強い相撲で幕内を戦う力士です。
身長188cm、体重170kgの恵まれた体格から繰り出される押しと寄りは、リーチとパワーを兼ね備えています。
特に立ち合いの当たりの強さと、右四つに組んだ後の寄りの威力は見応え十分です。
千代大龍秀政(ちよたいりゅう ひでまさ)
千代大龍はスピード重視の突っ張りが持ち味で、瞬間的な連打で相手を崩します。
体格はそれほど大きくありませんが、技術とリズム感に優れた突っ張りで格上を倒すことも多い実力派です。
名手たちの突っ張りの特徴と見どころ
歴代名手に共通する特徴は、以下の3点です。
- 出足の速さ:立ち合いから一気に前に出る脚力と瞬発力
- 手の位置の高さ:相手の胸から顔面付近を狙う高い位置への突っ張り
- リズムの変化:単調にならず、緩急をつけた突っ張りで相手のタイミングを外す
観戦時の見どころは、突っ張りの「音」と「相手の後退速度」です。
名手の突っ張りは土俵に響く乾いた音と、相手が一歩も前に出られず後退し続ける様子が印象的です。
また、突っ張りから他の技へのスムーズな切り替え(例:突っ張り→押し出し、突っ張り→引き)も上級者ならではの技術です。
突っ張りの練習方法|初心者でもできる3ステップ

突っ張りは基礎からしっかり練習すれば、初心者でも着実に上達できる技術です。
ここでは段階的な練習方法を3ステップで解説します。
ステップ1:基本フォームを身につける(壁押し練習)
まずは壁や柱を使った一人練習で基本フォームを固めます。
【壁押し練習の手順】
- 壁から約50cm離れて四股(しこ)の姿勢(膝を曲げ、腰を落とす)で立つ
- 右手の手のひら全体を壁に当て、肘を伸ばして押す
- 手を引いて元の位置に戻す
- 左手も同様に行う
- 左右交互に繰り返す(1セット20回×3セット)
ポイントは、手だけでなく腰と足の力を使うことです。
壁を押す瞬間に後ろ足で床を蹴り、腰から前に出るイメージを持ちましょう。
手のひらは指を開いて壁全体で押し、手首が内側に曲がらないよう注意してください。
ステップ2:連続動作のリズムを掴む
基本フォームができたら、連続性とスピードを高める練習に進みます。
【鉄砲(てっぽう)練習】
鉄砲は相撲部屋で行われる伝統的な突っ張り練習で、柱や専用の鉄砲柱を使います。
- 柱の前に立ち、四股の姿勢を取る
- 「右、左、右、左」とリズミカルに交互に突く
- 最初はゆっくり(1秒に1回)、徐々にスピードアップ
- 目標は1秒間に3回以上の突っ張り
- 1セット30秒×5セット
重要なポイント:突く瞬間に息を吐き、引く瞬間に吸うという呼吸法を身につけましょう。
これにより持久力が上がり、長時間の突っ張りが可能になります。
また、足の運びを止めないことも大切で、突っ張りながら前に出る感覚を養います。
参考:相撲のテッポウ動画解説
ステップ3:二人組で実戦形式の練習
一人練習で基礎ができたら、パートナーと組んで実戦的な練習を行います。
【受け手付き突っ張り練習】
- パートナーは両手を前に出して防御姿勢(ミット代わり)
- 攻撃側は連続突っ張りで相手を後退させる
- 3メートル程度押し込んだら交代
- 各自3セットずつ実施
受け手は適度な抵抗を与えることが重要で、簡単に押されすぎても、頑張りすぎて全く動かないのも良くありません。
攻撃側は、実際の相手の反応を感じながら突っ張りの角度や力加減を調整する感覚を養います。
慣れてきたら、受け手が時々横に動いたり反撃を試みたりすることで、より実戦的な状況を作り出します。
練習時の注意点|怪我を防ぐ3つのルール
突っ張り練習は激しい動作を伴うため、以下の3つのルールを必ず守りましょう。
①ウォーミングアップを十分に行う
特に肩、肘、手首のストレッチと軽い柔軟体操を10分以上行ってから練習を始めます。
冷えた状態での激しい突っ張りは、関節や筋肉を痛める原因になります。
②顔面への直撃を避ける
練習では胸と肩を中心に狙い、顔面は避けるのが基本です。
特に初心者同士の練習では、コントロールが未熟なため顔面への突っ張りは厳禁です。
慣れてきても、鼻や目の周囲への直撃は大怪我につながるため、常に注意を払いましょう。
③疲労を感じたら無理をしない
腕や肩に疲労が溜まると、フォームが崩れて怪我のリスクが高まります。
1セット終わるごとに30秒〜1分の休憩を取り、水分補給も忘れずに行いましょう。
痛みや違和感を感じたら即座に練習を中止し、必要に応じて医療機関を受診してください。
突っ張りに関するよくある質問

突っ張りについて多く寄せられる質問に回答します。
Q. 突っ張りは痛いですか?
A: はい、プロの力士による突っ張りは相当な痛みを伴います。特に顔面付近を突かれると、目が眩んだり鼻血が出たりすることもあります。力士は日々の稽古で突っ張りを受け続けることで、ある程度の耐性を身につけていますが、それでも痛みは避けられません。ただし、初心者の練習レベルでは力加減を調整するため、過度な痛みはありません。
Q. 突っ張りだけで勝てますか?
A: はい、突っ張りだけで勝つことは十分可能です。実際に「突き出し」や「突き倒し」という決まり手は、突っ張りを主体とした攻めによるものです。ただし、相手が突っ張りに慣れている場合や、体格差が大きい場合は、突っ張りだけでは限界があります。上級者は突っ張りを起点に、押し・引き・投げなど多彩な技に展開できる総合力が求められます。
Q. 子どもや女性でも突っ張りはできますか?
A: もちろん可能です。突っ張りは力だけでなく、技術とタイミングが重要な技なので、体格や性別に関係なく習得できます。子ども相撲や女子相撲でも突っ張りは基本技として指導されており、正しいフォームを身につければ効果的に使えます。むしろ体格で劣る場合、突っ張りのスピードと技術で対等に戦える利点があります。ただし、成長期の子どもは無理な負荷をかけないよう、適切な指導のもとで練習することが大切です。
Q. 突っ張りを受ける側の対処法は?
A: 突っ張りへの主な対処法は3つあります。①低く構えて懐に入る:腰を落として相手の懐に潜り込み、まわしを取る。②横に動いてかわす:正面で受けず、左右にステップして突っ張りの軌道から外れる。③いなしや引き技で相手の勢いを利用:突っ張りの力を横や下方向に流し、相手のバランスを崩す。いずれも、真正面から突っ張りの力を受け止めるのではなく、力の方向を変えたり避けたりする技術が重要です。
もっと相撲を深く学びたい方へ|おすすめ書籍・教室情報

突っ張りをはじめとする相撲技術をさらに深く学びたい方には、以下のリソースがおすすめです。
【おすすめ書籍】
- 『相撲の技術と鍛錬法』(ベースボール・マガジン社):突っ張りを含む基本技の詳細な解説
- 『相撲百科事典』(講談社):決まり手や歴史、ルールを網羅した総合書
- 『力士たちの稽古』(文藝春秋):プロ力士の実際の稽古内容を紹介
【相撲教室・体験機会】
- 地域の相撲道場:各地に子ども向け・初心者向けの相撲教室があり、基礎から指導
- 相撲部屋見学:一部の部屋では朝稽古の見学が可能(要事前確認)
- 相撲体験イベント:両国国技館などで開催される体験型イベント
- 学校の相撲部・クラブ:中学・高校・大学の相撲部で基礎から学べる
【オンライン学習】
日本相撲協会の公式YouTubeチャンネルでは、決まり手の解説動画や過去の名勝負が視聴できます。
また、相撲専門のスポーツ指導動画サイトでは、元力士による技術解説が充実しています。
参考:日本相撲協会公式サイト
まとめ|突っ張りを知れば相撲観戦がもっと楽しくなる

この記事では、相撲の突っ張りについて定義から練習法まで詳しく解説しました。
最後に重要なポイントをまとめます。
- 突っ張りは手のひらで連続して突く合法的な攻撃技で、相撲の基本技術の一つ
- 押しは持続的圧力、張り手は横から叩く動作であり、突っ張りとは明確に異なる
- 距離コントロール・体格差の克服・心理的プレッシャーなど戦術的メリットが多い
- 寺尾・北勝海・水戸泉など歴代名手の突っ張りは観戦の見どころ
- 壁押し→鉄砲→実戦形式の3ステップで初心者でも習得可能
突っ張りの技術と戦術を理解すると、相撲観戦の楽しみが大きく広がります。
次に大相撲を観る際は、ぜひ力士の突っ張りに注目してみてください。
音、スピード、相手の反応など、これまで気づかなかった細かな技術が見えてくるはずです。
また、自分で練習してみることで、力士たちの技術の高さや日々の鍛錬の厳しさをより深く実感できるでしょう。
相撲の奥深さを味わいながら、突っ張りという伝統的な技を通じて日本の国技を楽しんでください。


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